ゴー宣DOJO

BLOGブログ
笹幸恵
2012.8.30 15:57

無知という名の罪

日本からおよそ5000キロ離れた

ブーゲンビル島。

そこで「焼骨式」を見たのは、

今から6年ほど前のことだ。

焼骨式とは、戦没者の遺骨を日本に

持ち帰るため荼毘に付すことをいう。

 

炎に包まれた頭蓋骨を見て、

私は不気味とも何とも思わなかった。

むしろこの非現実的な光景を、

「現実なんだ」と受け入れるのに時間がかかった。

戦争が終わって60余年も経過して、

こんなふうに南の島に忘れ去られた兵士たちがいる。

絶望的な気持ちになった。

 

南方の島々に取材に出掛けるまで、

こうした現実を知らずにいた。

私は自分の無知を恥じた。

 

戦後生まれだから。

学校で教わらなかったから。

 

そんなことは何の言い訳にもならない。

無知とは、ただそれだけで罪だと思った。

 

このときの、居ても立っても

いられない、心がワサワサした感じ。

今また、私はそれを味わっている。

小林さんの『脱原発論』を一気に読んで。

 

最初は喫茶店で読み始めた。

半分以上を読み終えたところで、

冷房で体が冷え切ってしまったので店を出た。

もう心がワサワサしていた。

何とかそれを落ち着かせようとして、

カラオケに行くことを思いついた。

 

なぜカラオケか、よくわからない。

初めて一人でカラオケに行って、

ちょっとドキドキ。

でも30分でやめた。

少しも気分転換にならないどころか、

自分の音痴さにウンザリして

かえって気分は落ち込んだ。

 

帰宅して、また読み始めた。

「原発作業員の現実」の章で

怖くなり、思わず冷房を消してしまった。

自分が何気なく使っている電気が、

こんな状況で生み出されていることを、

私は初めて知った。

無知とは、本当に罪である。

そしてまた、絶望的な気持ちになった。

 

 

この国って、一体何なんだろう?

誰もが当事者意識を持たず、

責任を取らない。

何が起きても「対岸の火事」だ。

それがホントウに自分の身に起きるまで、

誰もがどこかで「自分には関係ない」、

「自分だけは大丈夫」とタカをくくり、

その希望的観測に無自覚なまま、

なおかつそれにすがって生きている。

そしてその「空気」は、新たな当事者意識の

欠如を許し、蔓延させる。

 

「保守」だから原発推進?

何だ、それは。

「保守」とは、一体何を保守するのか。

 

以前、震災で倒壊した慰霊碑の現状を確かめるため、

福島の二本松市まで行ったことがある。

戦没者慰霊碑は根元から、まるで木の枝の

ように「ポッキリ」と折れていた。

その脇には、小さなお堂があった。

辛うじて倒壊は免れ、壁のひび割れを

地元の遺族会の人々が応急修理したという。

 

お堂の中には、この地域から出征した兵士たちの

写真がズラリと飾られていた。

名前はもとより戦死場所や戦死年月日も、

わかる範囲で記されていた。

一人ひとりの顔と名前をたどるうち、

涙が出てきた。

彼らはまさに、この故郷(クニ)を守ろうとして、

この故郷から出征したのだ。

 

彼らが守りたかったものは何か。

横浜の新興住宅地で育った私にも、

それくらいのことはわかる。

 


 

名もなき人の想いを踏みにじり、

声なき声に耳を傾けない人は一体誰か。

 

勇ましいことを言うだけが「強さ」だと

履き違えているのは一体誰か。

 

当事者意識どころか、他者を思いやる想像力まで

欠如しているのは一体誰か。

 

無知であることは、やはり罪である。

無関心でいることは、もっと罪である。

私は、自分の無知無関心を恨む。

 

でも今、「無知は可能性である」と

自分に言い聞かせている。

少なくとも私は、自分の無知に気づいた。

それだけで一歩前進。

“気づき”から、すべては始まるのだから。


 

今度の拡大版ゴー宣道場は「祭り」だ。

同時に、多くの人にとって“気づき”の場でもあると思う。

 

先人に心を寄せる想像力を持ちたい。

他者を思いやる優しさを持ちたい。

現実を直視する勇気を持ちたい。

これをオンナ特有のセンチメントだと

一蹴し、笑いたい人は笑え。


 

一体何を「保守」すべきか。

国を愛するとはどういうことか。

何度でも何度でも、私は考えていこうと思う。

 



「ゴー宣道場 拡大版」
『倫理と成長の脱原発』

9月16日(日)正午から
世田谷区等々力の
「玉川区民会館ホール」
開催します絵文字:重要

入場料は、お一人900円です。

拡大版「ゴー宣道場」は、
このHP上からの応募も可能です絵文字:重要絵文字:重要


もちろん引き続き、
ハガキでのご応募も受付けています絵文字:記念日

往復はがき に、『拡大版ゴー宣道場 参加希望』 と明記、

さらに、


1.
氏名(同伴者がいる場合はその方の氏名と続柄・関係など)

2. 住所

3. 電話番号
4. 年齢

5.
職業(学生の方は学校名)
6.
募集を知った媒体
7.
応募の理由と道場への期待

返信はがきの宛名には、ご自分の氏名・住所をご記入の上、

152-8799

東京都目黒区目黒本町1-15-16 目黒郵便局・局留め

『ゴー宣道場』代表・小林よしのり、担当・岸端


まで、お送り下さい。

応募〆切、申し込みフォーム、往復ハガキ共に

平成24年9/3(月)必着

ネット、ハガキ共に、

当選された方にのみ当選通知を送らせて頂きます絵文字:記念日
当選通知の送付は、応募〆切後になりますので、しばらくお待ち下さい絵文字:よろしくお願いします

皆様からの多数のご応募、お待ちしております絵文字:重要絵文字:晴れ

 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

次回の開催予定

第117回

第117回 令和6年 5/25 SAT
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO in大阪「週刊文春を糾弾せよ!」

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